アートメークに挑戦
私の自前の眉は少し下がり気味で、それを整えて描くので、端のほうにいくと眉本体がない。特に向かって左側の山はまるで毛がないので、少し汗をかいたり、こすれたりするだけでなくなってしまう。それがイヤでジムでもすっぴんでやっている。だからたまに化粧した顔でトレーナーさんに会うと、
「わ、誰かと思った。顔が違う!」
といわれる。毎回言われる。いくら化粧顔をみる間隔が空くとはいえ、いい加減に慣れて欲しい。
とにかくです。テニスをやるときは化粧してるので、左眉が欠けていくのを気にするのもわずらわしい。かといってアートメークというと、老眼級のオバサマのものというイメージ。現に私の周りでアートメークをやっているのは友人のお母さんや、ジムのお仲間のオバサマたち。中のひとりのオバサマが、三年位前に眉のアートメークをやって、当初眉を隠しなが行動していた思い出については、先日このブログにも書いた。すっぴんなのに「いかにも描いたという眉」にご自分で当惑されていたのだけど、私は言われるまで彼女のアートメークに気づかなかった。
ちなみにアートメークを知らないであろう男性方にご説明すると、アイラインや眉を軽い刺青で描くもので、もちろんクレンジング等では落ちない化粧。もちは店ごとに表示が違うけど1~8年と言ったところ。3年ぐらいの表示のところが多い。個人差があるらしい。
そんなある日、いつもの脱毛サロンで、私を担当した20代前半らしきお姉ちゃんがアートメークをやっていることを知る。
「アイラインなんか若い子多いですよ」
それでなんとなくやる気に。単純。
店選び。ジムのオバサマ方に行ったお店を聞いたり、自分でネットで探したりした。だいたい数回に分けて色を入れるのだけど、多くの店が一括で5万くらい。中には一回ごとに値段設定がある店もある。私はこの一回ごとに値段設定がある店から、有名人のボディペイントも手がけたらしい池袋のタトゥー店をチョイス。初回が二万円で、色が薄いとか気に入らないときに、色が落ち着く約二週間後に二回目(一万五千円)、三回目(一万円)と修正値段が設定されている。合計金額でも他店より安い。
「うちは素顔で違和感のない仕上がりをモットーにしていますので、だいたいのお客様が一回で終わりで、一年くらい経ってから修正に見える方が多いです」
池袋の駅近くのマンションの一室で女性専用サロン。美人のねーちゃんが施術してくれる。まずは大きな鏡のある洗面所で眉の下書き。
「どうでしょう? 今みたいな眉がお気に入りですか?」
「正直自分でわからないんです。私、友人に何回か”眉が細いね”とか”なんでそんなに眉が細いの?”とか”前世は平安時代だね”とか言われたことあるんです。でもこの話のキモは、私が自分の眉を細いと思っていないことなんです」
笑いながら美人ねーちゃんは、
「そうですね、今より太め仕上げでもいいかもしれませんね」
「とにかく自然な仕上がりをモットーに、お任せします」
短めに仕上げて描き足すのがすっぴんのとき自然でいいというおねーちゃんに、左眉の山が落ちるのがいやなので、そこははっきり描いて欲しいことなどをリクエストして眉の下書きをしてもらう。
「どうですか~このほうが美人顔ですよ。エレガントです~」
よくわからないけど、変ではないと思ったのでそのまま彫ってもらうことに。だいたい自分の顔に何が正解か、みんなそうだと思うけど、鏡ってあまりに思惑と自意識が反映されてわからない。
部屋に移動してベッドに仰向けになる。もとがタトゥーのお店なので、作品らしきタトゥーの写真が壁に飾ってある。
「やっぱりタトゥーとアートメークは違うんですかね」
「違いますね。入れる深さと染料の濃さが全然違います」
一般にアートメークは数年で落ちるものとされているけど、それはわざとそうなるように浅く薄く描いているらしい。眉の流行りも変るし、人の顔も歳をとれば変るので、何年も同じ眉では奇妙な顔になってくるらしい。だからタトゥーのように深く濃く染料を入れて、10年、20年と落ちないように仕上げることは実は簡単とか。
「タトゥーのほうが痛いんですかね」
「全然痛いですね。でもタトゥーは痛いことがイベントのひとつみたいなもんですから」
さらっと言うおねーちゃん。麻酔もかけないらしい。谷崎潤一郎の「刺青」思い出しますね。対しアートメークは、「毛抜きで毛を抜く程度の痛さ」との説明。しかしはっきりいうけど、それよりは絶対痛い。ガマンできないということは全くないけど、毛抜きで毛を抜くより明瞭に痛い。しかしIVラインの脱毛を完了させようとしている私は屁の河童。
下書きから1時間半ほどで終了。これから三日はワセリンを塗りたくるように指示される。炎症を防ぐのと、そのほうが着色がいいらしい。三日はサウナとプールもだめ。術後すぐは、サウナは激しい発汗で色落ちする可能性があるらしい。プールは傷口からの感染予防のため。施術後三日間ぐらいが一番発色が濃く、一週間くらいで半分から七割に落ち着くらしい。その後様子をみて不満なら二週間後くらいに修正に行くというシステム。
帰宅。母に言うと絶対否定意見がくるので黙っている。なにも気づかない母。老眼のせいか。以前鏡もなにもみないで自分の眉を描いていたつわもの。「だってみえないんだもん」。妹も何も言わない。そこで彼女にはアートメークをやったことを告白。
「どお?」
「ん? 普通」
淡白な返答。翌日ジムに行く。プールに入れないのでトレーニング室へ。ロッカーで例の三年前のアートメークで眉を隠していた女性に会う。
「珍しいわね。いつも平日はプールなのに、今日はトレーニングなのね」
「はい。実は昨日アートメークをやりまして、プール禁止なんです」
「あら、そうなの? 素敵じゃない・・・・・でも気づかなかったわ」




最近のコメント