ようこそ川越へ!
友人の高校時代の同級生が本を書いて、それが映画になるというので紹介してきたのがこの「のぼうの城」(和田竜著)。そのすぐあとに、いつもチェックしているジョナサン・ケイナーの占いサイトのお薦め図書コーナーでもこの本が紹介さていれた。これはご縁と、いつものように啓示を感じて読むことに。
現在の埼玉県行田市に位置した小さなお城、忍城に攻め込む石田三成軍数万の大軍を、数千の成田軍が迎え撃ち、撃退する痛快ストーリー。この忍城の城代、でくのぼうの「のぼう様」こと成田長親の人物描写を通して、人心を集める人間の魅力とはなにかを描き出す。
この小説の冒頭に「河越夜襲」のことがちらっと出てくる。
私は埼玉県川越市に住まうこと20年。祖母が住んでいたころから知っているのでほぼ30年川越をみている。川越は関東近県ではちょっとした観光地で、春秋の休みともなると駅には中高年の観光客がけっこうたくさん見受けられる。住民の私から言わせると川越は観光地というよりは都会。川越は都会だよ~スタバが三軒もあるし、エクセルシオールカフェもあるし、タリーズカフェもできたし(コーヒーショップの出店量で都会度を測る私)。ユニクロもあるし。とにかく川越にないものはないってくらい都会。全てが川越で済む。
観光地にあたる部分は少し駅から離れている。観光用のシャトルバスも駅から出ているけど、基本的には歩いて喜多院なり川越城本丸御殿を目指すのをお薦めする。ゆっくり歩いても20分くらいで着くし、土地勘がつかめる。坂がないのが長所なので、高齢者でもいける。喜多院や本丸御殿、時の鐘、菓子屋横丁を見てまわるくらいなら、休み休みでも三時間もみれば十分。けっこうあっという間に終わる。変に期待しないで来て欲しい歴史の町川越。それなら大して疲れないし、適度に歴史を感じて満足できるステキな観光スポット川越。川越がテレビに映るとき時の鐘がよく出るけど、あれはそばにいくと建物が邪魔で地上から見えないところがステキ。蔵作りの町並みも観光スポットとされているけど、交通量の多い車道の両脇に立ち並ぶので風情にいまひとつ欠けるのもステキ。あとはここはオススメっていう食事どころがないのも特長。食べるところ自体はたくさんあるけど。チェーン店とか。私が知らないだけかしら。川越はサツマイモで有名なのですが、「九里(栗)四里うまい十三里半」というのはサツマイモのことを指していて、江戸~川越間が十三里半あることをいったもの。というわけで銘菓芋ようかん。たまに食べると私はおいしいと思いますが、川越出身の母が「いもようかん~?」という台詞はテンションが下がったことをアピる口調で常に発せられます。戦後間もない子供のころ、相当量のサツマイモを食べた様子。菓子屋横丁には直径10センチ、長さ1メートル以上と思われるドでかい「ふ菓子」が売っていて、おみやげにか買っていく人をよくみかけますが、本当に全部食べられるのかかなり疑問。川越初詣のメッカ、喜多院には江戸城から移築した「徳川三代将軍家光公ご生誕の間」というのがあります。春と秋の観光シーズンには「宝物展」というのが行われて、普段あの狭さで400円とる拝観料が1000円まで跳ね上がるぼったくりぶり。しかも宝物展は廊下とか普通の日本間の畳の上に直に徳川家ゆかりの品々を並べて置くので、虫干しをやってるようにしか見えない。とにかく徳川家ゆかりの食器他の品々は、ルイ・ビトンもびっくりというくらい葵の紋がマルチに展開されています。籠やお姫様の打ちかけも虫干し、じゃなくて展示されるのですが、当時のひとがいかに小柄だったかがしのばれて面白いです。喜多院の庭は小堀遠州流枯山水式庭園なのですが、徳川家ゆかりの小堀遠州設計ということではもちろんなく、今の状態になったのは昭和に入ってからのごく最近。うちの母と一緒に行ったとき、
「お母さんが小さい頃は雑草がぼうぼうに生えていて、こんなに整備されていなかった」
と他の観光客がいるそばでリアルコメント。
と、随分話がそれましたが「河越夜襲」。北条氏の拠点のひとつだった川越城に足利幕府軍八万が攻め込んできて、やはり数千の北条軍で蹴散らしたというエピソードが河越夜襲。この本には出ていないけど、河越夜襲のとき大軍が攻め込んできたのを、「霧吹きの井戸」という井戸から大量の霧が出て、平城(天守閣がない一階建て)である川越城を隠し、敵軍から城を守ったというエピソードがある。この「霧吹きの井戸」が本丸御殿から少し歩いたところにあるのだけど、「ええっ? これが?」というようなちっさい井戸が風情もなく放置されているだけ。皇居に行ったとき、「松の廊下あと」と表示の棒が土に刺さっているのをみたときと同じくらいのインパクトが。ちなみに川越城はその昔広大な湿地帯に位置していて、霧で城が隠れたというのもありえない話ではなかったよう。ちっこい井戸から霧が出て城を隠したのはウソでも、それを支える現実はあったようです。こういう伝説って、あながち根拠のないものではないことが多い。本丸御殿には「霧吹きの井戸」など川越に伝わる伝説が表示されているのですが、このほかには、増水で悩まされていたこの地区を救うため、大田道灌の娘が人柱として川に身投げしたら水害が治まったとか、あまり気持ちのよくないエピソードの数々が。霧吹きの井戸くらいですね、読んでて楽しいのは。というわけで川越城は別名「霧隠れ城」ともいいます。
というわけで冒頭から随分話題がそれましたが、この「のぼうの城」、魅力あるキャラクターが簡潔な文章で描き出され、その人間造詣も浅くなく、私の嫌いな日本的ベタベタ感もない。爽快エンターテイメント。お薦めします。








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