文楽「仮名手本忠臣蔵」@国立劇場
浴衣を着て文楽を見に行こうという毛妹(7/20記事既出)の提案により。毛妹は初めての文楽。私は十年ぶりくらいの二度目。
http://www.ntj.jac.go.jp/performance/674.html
朝10時半から三部まで全部みると終わるのは夜八時を過ぎるらしい。耐久できるわけもなく、一部のみ二時過ぎまで。大序から四段目「城明け渡しの段」まで。
祖母と長く暮らしていたせいもあり、テレビで忠臣蔵は何度もみているから楽。文楽は同時代に書かれて生々しさをごまかすせいなのか、室町時代の設定に。高師直(吉良上野介)は塩谷判官(浅野内匠頭)の美貌の妻に横恋慕し、思いの伝わらない腹いせに塩谷をいびる。事情も知らずキレる若い塩谷。袖の下がないせいで「鮒武士」扱いするのはいわゆる「忠臣蔵」と共通しているけど、美貌の妻のエピソードはないですよね。吉良って、そういう脂ぎったエロ親父というより、ネチネチ女っぽい因業爺の印象。
高師直といえば実在した足利幕府の重臣。教科書にずっと載っていた足利尊氏像は実は高師直だったのではという話はありましたね。
この「仮名手本~」の面白いのが、高師直の無礼にハラを立てるのが塩谷判官だけじゃなくて、若狭助という同様に若い殿様が登場すること。若狭助が帰って自分の城で、
「高師直、まっぷたつに切ってやる~」
と息巻いていると、家老・加古川本蔵が、
「ぜひそうしなさい」
と言ったその足で高師直に付け届けをして機嫌をとり、血気盛んな若い君主の出鼻をくじく。これもいわゆる「忠臣蔵」にはないエピソード。この智臣のおかげで老中以下家臣は、塩谷のところみたいにお家取り潰しの憂き目を逃れる。けどこのおじいちゃん老中、廊下で高師直に切りかかった塩谷判官を、「殿中でござる」(という台詞は文楽にはない)と止めちゃうんである。塩谷の家臣じゃないのに。これはどうなんだ、おじいちゃん。本懐遂げられず切腹お家取り潰しの塩谷家臣に恨まれる。人生というものの深みを感じるエピソード。おじいちゃんの命運はいかに。
悲劇の英雄を好むことを「判官びいき」というけれど、これがモトネタか、と思ったら、そっちは「九郎判官義経」からきていた。判官違い。
パンフレット(600円)は床本と呼ばれる台本つき。上演中も舞台の両脇に字幕が出る。イヤホンガイドもあったけど、私は以前歌舞伎を見たときに作品と自分ひとりで相対するのを邪魔するモノという印象があるので使用せず。毛妹は初めての文楽だからと使っていたけど、途中から切っていた。
小劇場といえど場内は満席。塩谷切腹のシーンでは涙をこぼす人も。常日頃誰よりも先になく「泣き女」の私としては予想外の完敗。ま、泣きはしなかったけど、切腹シーンは人形といえど痛そうだった。差してから死ぬまで長い。
「諸手を掛け、ぐつぐつと引き回し、苦しき息をほとつき」
など描写もえぐい。
写真にあるのは国立劇場売店で売られる切腹最中。五個だかで1250円。パカっと割れてはらわた出てる感じ。鑑賞の記念に購入。普通に美味しかった。


最近のコメント