あなたには言えない
まだ前の会社で働いていた頃の話。同僚で占い友のBM嬢が結婚することに。さっそく婚約者の生年月日を聞いてみたところ、少し間をおいてから、
「ヤダッ、言いたくない! だってカワカミさん、いろいろ(占いで)調べそうだから」
と言われた。繊細になりがちな婚約中にあっては、気持ちはわからないでもないと、それ以上は聞かなかった。
後日ランチの時間、いつものように某コーヒーショップに行くと、BM嬢がテーブル席に一人でいた。せっかくだからと同席。彼女のトレーにはピンク色のクリームがトッピングされたチョコレートのカップケーキが乗っていた。
「新しいカップケーキが出てたから買ってみたけど、味見してみる?」
正直あまりおいしそうには見えなかったけど、せっかくなので一口いただいた。どう? と聞かれたので、努めてニュートラルな顔で、
「ん? 見た目通りの味」
と答えた。もともと彼女は察しのいいひとなので、
「でしょ? あんまり美味しくないのよ。それでいてけっこう高いの」
「いくら?」
するとやはり少し間をおいて、
「ヤダッ、言いたくない!」
すぐそこのカウンターで売っているものの値段を言いたくないといわれてもな、とこの一件は妙に可笑しくて印象に残っている。確かそのカップケーキは300円くらいだった気がする。味といい大きさといい、値段に見合ったものではなかった。
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